日本料理の命 出汁

晴子若女将のつれづれ話 201901 明けましておめでとうございます。
前回の更新からずいぶんと時間が経ってしまい、お久しぶりのつれづれ話となってしまい、申し訳ございません。

私事で大変恐縮ですが、前回の更新後に重度のつわりに苦しみ、その後出産・育児と目まぐるしい毎日でございました。
もちろん店へは、妊娠中もずっと(病院に入院する当日まで)出勤しており、出産後も半月位で復帰していたのですが、とにかくつわりが重くて、食べ物のことを考えることができず、人生で初めてやせ細りました。
ビルの守衛さんに「あんまりダイエットし過ぎたらあかんよ~。」と心配されて声をかけていただくほどでした。ただ、一番つわりがしんどい時は、妊娠安定期に入る6ヶ月よりも前でしたので誰にも言えず、心配してくれる守衛さんにも力なく笑い返すだけでした。店のスタッフはベテラン揃いですので、皆気付いていたようですが・・・。


さて、つわりや出産が落ち着いたら再開しようと考えていたつれづれ話ですが、出産後の育児に、とてもとても落ち着く暇はなく、これでは一生書く暇はないと思い、出産や育児を通して思ったことなどをとりあえず記しておこうかと、お久しぶりの更新となりました。

まず、つわりを通して感じたことは、「自分は食べ過ぎていた」ということでした。
人間ってそんなに食べなくても十分機能し、生きていけることがわかり、いかに脳の欲求のまま食べたいものを食べていたのだと実感しました。
そして、欲求通りに食べたいものを食べることができるということは、とても幸せなことなのだと実感しました。
つわり中は余計なものがお腹に入ると、赤ちゃんが怒って排除するのだと聞かされ、排除されないものは何か試行錯誤しながら私なりにたどり着いた結論は「出汁」でした。出汁の香りは大丈夫で、最終的には雑炊の出汁ばっかり飲んでおりました。不思議と出汁を飲むと赤ちゃんも喜んでいるような気がしていました。


晴子若女将のつれづれ話 201508出汁は、いろいろなタイプがありますが、私共の店は昆布と鰹節でとります。
出汁には昆布のグルタミン酸と鰹節のイノシン酸が含まれて、最近では海外でも注目されている「旨味」成分となっています。この出汁はシンプルであって、究極の材料ですので、一番費用も手間もかかっております。

私共の昆布は北海道産、鰹節は枕崎産で毎日使う分だけを削って、毎朝出汁を引きます。前日に残ったからと言って、次の日に使うことは絶対にありません。(出汁の残りは、まかないでスタッフの昼食となって頂きます。)
出汁はほとんどのお料理に使いますので、ベジタリアンの方へは、特別に昆布や椎茸でとった出汁を使います。日本料理ならベジタリアンの方でもOKだろうと思われがちですが、そうではなく、出汁を使うお料理は動物性なのです。

その出汁の美味しさを一番感じていただけるのが、椀物です。絶品の吸地を飲むと、体の毛細血管の先端にまで栄養が染み渡るような感覚になります。
それは私が、飢餓状態に陥っていたからかもしれませんが、その感覚を一度試していただきたいと思います。

妊娠中から食べるものにはかなり気を使っていましたが(体によくないものは自動的に排除されるため)、出産後も子供に少しでもいいものを考え、離乳食にも店の昆布出汁を使いました。
野菜を昆布出汁で柔らかく焚いて、小分けにして冷凍し、食べる時に、「今日は法蓮草とじゃが芋と人参」と選んでレンジでチーンするだけでした。さすがに食べっぷりもよくて、離乳食が進まないという悩みは一切なかったです。

市販のものも沢山いいものがありますが、神戸吉兆の昆布出汁離乳食にご興味のある方は是非ご相談下さいませ(笑)
ちなみに今でも出汁大好きな2歳児ですが、コーンスープなどスープ系も大好きなので、妊娠中から出汁ばっかり飲んでいたことはあまり関係ないかもしれません・・・。


日本料理の命とも言える出汁について、私事を交えてのとりとめのない話になってしまい申し訳ございません。今後も楽しみながらぼちぼちと更新していけたらと考えておりますので、お付き合いいただければ幸いです。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2019年1月9日
神戸吉兆 若女将 平野晴子