
お客様と料理店の出会いは一期一会だと思います。その時間を最大限に楽しんでいただくため、私たちは料理に関わるあらゆる要素、— 器、季節のしつらえ、場所、建物、サービス— そのすべてにおいて入念な準備をします。幸い、嵐山は桜や紅葉の景勝地であり、最高のお食事を楽しめる自然環境に恵まれています。とはいえ、日本あるいは京都という当店の立地を過度に強調したくはありません。嵐山は、祖父から父へ、そして私が跡を継ぎましたが、重要なことは、その受け継いだものをどう生かしていけるかだと思うからです。そのために最善を尽くしています。
素晴らしい料理を作りたいという気持ちや情熱は、世界のトップといわれる料理店すべてに共有されるものだと思います。私たちもその想いは同じです。ただ、それは料理を見ただけですぐにはわからないものです。
例えば、吉兆の料理は予約した瞬間から「おいしい」が始まります。なぜなら、お客様は当店に来るのをとても楽しみにされているからです。
今日のいわゆる日本料理のほとんどは、明治時代(1868-1912年)後に確立されたものです。食べることはきわめて基本的な人間の行動なので、少し地理的な違いはあるかもしれませんが、食べる人の欲求や願望はお互いそれほど違いはありません。もし、日本料理はある一定の様式でだけ用意されるべきだと言う人がいるならば、それは柔軟性のない考えだと思います。
日本料理の起源についてはたくさんの説があります。その一つに、桃山・江戸時代(16世紀から19世紀)の間に確立された非常に儀式的な様式である本膳料理(フルコースの高級料理)に由来するという説があります。懐石は、本膳料理を簡素化したもので、茶道とともに発達したといわれています。
今日では、世界中から様々な種類の食材が集められ、新しい調理形式や調理方法が生み出されて発達し、その結果、料理は芸術として進化を続けています。例えば、お造りにしても、サバは、以前は都市に運ばれる前に保存のために塩漬けにしないといけませんでしたが、今日の最新の物流網によって海から厨房まで生きた状態で持ってこられるようになりました。社会や技術の変化が、料理法全体のあらゆる側面に影響を与えています。
それぞれの食材の微妙で繊細な味が、大地や海から直接お皿に載せられるようになった今の時代には、料理はその出所に戻ることができます。当店で使う調味料から酒に至るまでのすべてのものは、当店の料理のために特別に作られています。当店の野菜や果物は、有機栽培で育てられた最高級の品質のものです。畑で採れた新鮮な作物が直接お店に運ばれてきますし、私たち自身が畑に出向いて、作物の品質をチェックしてからメニューを決めることもあります。
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日本料理の美しさは、色のコントラストにあると思います。料理をするとき、私たちは常にこのことを考慮に入れ、食材と器の最適な組み合わせや、もてなしの方法を決めています。写真の器は、青の釉薬で絵柄が描かれた古青磁で約400年前のものです。祖父が買い求め、今も私たちはお店で使っています。そのとても微妙な青の色合いは、簡単には手に入るものではありません。そこには、その器の歴史とたくさんの人々の考えや情熱がこもっています。これは時間だけが生み出せる色です。そのお皿に、畑で採れたばかりの新鮮な苺がたった一つ置かれています。この苺は、当店専属の農家の方によって生産されたものです。茎がついたままの摘みたての苺と、400年を経た洗練された器とが一体となって、いつまでも記憶に残る美しさのイメージを作り上げています。これこそ私の料理における目標であり、その目標に向かって日々努力しています。 |
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